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名古屋地方裁判所 昭和44年(ワ)3100号 判決 1971年5月11日

原告

寺浦美喜男

代理人

高木修

被告

川本孝

代理人

瀧澤孝行

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告

1  被告は原告に対し、金五六五万四、〇〇〇円およびこれに対する本件訴状送達の翌日より右金員支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え

訴訟費用は被告の負担とする。

2  仮執行宣言

二、被告

主文と同旨

第二、当事者の主張

一、原告の請求原因

1(一)  原告は訴外川本清治から別紙目録(一)記載の土地を買受ける旨の予約をなし、右土地について所有権移転請求権保全仮登記を経由していたところ、昭和三九年八月頃被告と、右土地に対する売買予約上の権利と別紙目録(二)記載の土地とを交換する旨の契約をした。

(二)  右契約に基づき、原告は被告に別紙目録(一)記載の土地に対する売買予約上の権利を譲渡したところ、被告は昭和四〇年五月一三日これを訴外牧常春に売却し、同訴外人は昭和四〇年五月二五日所有権移転登記を経由し完全にその所有権を取得した。

(三)  然るに右交換契約に基づいて被告が原告に譲渡することになつた別紙目録(二)記載の土地は、訴外川本渉の所有物であり、同訴外人は被告に右土地を譲渡する意思がないことが明らかになつたため、被告が右土地の所有権を同訴外人より取得して原告に移転することは不可能になつた。

(四)  よつて原告は被告に対し、右履行不能を理由として右交換契約を解除し、別紙目録(一)記載の土地の返還にかえて、右土地の価額に相当する金二〇〇万円の支払を求める。

2(一)  昭和四三年一月一五日、原・被告間に、原告を売主、被告を買主として左の如き売買契約が締結された。

売買目的物件 別紙目録(三)記載の土地

代金 三四四万四、〇〇〇円

代金支払期 契約締結時に三〇万円支払い、残代金は、昭和四三年二月一五日までに所有権移転請求権仮登記をなし、右手続が完了するまでに支払う。

(二)  昭和四三年三月二二日、原告は被告のために訴外寺尾戸一を権利者として右土地について同日の売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記手続をなした。然るに被告は右売買代金のうち金二二八万円を支払つたのみで、その余の支払をなさない。よつて原告は被告に対し右売買代金残金一一六万四、〇〇〇円の支払を求める。

3(一)  原告は被告に対して別紙目録(四)記載の土地の売却幹旋方を依頼し、昭和四三年一〇月三〇日被告の斡旋により、訴外藤森土地区画整理組合に対し右土地を代金七二〇万円で売却し、被告は同日頃原告の代理人として右代金を受領した。

(二)  然るに被告は右売却代金のうち金六二〇万円を原告に交付したのみで、その余の支払をなさない。よつて原告は被告に対し右売買代金残金一〇〇万円の支払を求める。

4(一)  原告は昭和三八年二月一五日被告および訴外高木政雄の斡旋により、訴外浅井鶴松より別紙目録(五)および(六)記載の土地を、代金一五三万円で買受け、その代金を支払つた。

(二)  ところがその後被告および高木政雄は、訴外浅井より受領した登記に必要な書類を利用して、右二筆の土地を代金四〇〇万円で訴外青山稔、青山さん、高木錫司、高木善司ら四名に売却し、昭和四三年六月一四日右四名を権利者として売買予約を原因とする所有権移転請求確保全の仮登記をなした。

(三)  よつて原告は、昭和四五年一月八日訴外高木錫司、高木善司に金二〇七万五、〇〇〇円を、同年同月一八日に訴外青山稔、青山さんに金一八四万円を、それぞれ支払つて右の仮登記の抹消登記手続をなさしめた。

(四)  原告は被告の右行為により金三九万五、〇〇〇円の損害を蒙つたのであるが、被告はこれに対し金二四二万五、〇〇〇円を賠償したのみで、その余の損害賠償をなさない。よつて被告に対し金一四九万円の損害賠償を請求する。

5  以上の理由により被告に対し以上合計金五六五万四、〇〇〇円およびこれに対する本件訴状送達の翌日より右支払ずみに至るまで、年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだ。

二、被告の主張

昭和四四年一一月一五日、原・被告間において、被告は原告に対し愛知郡長久手村大字長瀬字山桶八番一、畑一七五平方米の土地に関する所有権移転登記申請書類一切を交付し、かつ、金二八七万五、〇〇〇円を支払い、原告はその余の請求を放棄して、本件訴えを取下げる旨の合意がなされた。よつて、被告は同日右の登記申請書類一切を原告に交付し、また昭和四四年一〇月一一日金二五万円、同年一二月二九日金一八七万五、〇〇〇円、昭和四五年一月六日金五五万円をそれぞれ原告に支払つた。

三、被告の右主張に対する原告の認否

被告主張の事実は否認する。

第三、証拠<略>

理由

<証拠>を総合すれば、原告と被告は昭和四四年一一月一五日頃別紙目録記載の土地並びに愛知郡長久手村大字長瀬字山桶八番の畑に関する右当事者間の紛争について和解をなし、被告は右山桶八番の畑に関する所有権移転登記申請書類一式を原告に交付し、又右当事者間で合意された金額を原告に支払い、原告は本件訴えを取下げる旨の合意をなしたこと、および右契約に基づき被告は昭和四四年一一月一五日右登記申請書類を原告に交付し、昭和四四年一二月二九日に金一八七万五、〇〇〇円、昭和四五年一月六日に金五五万円を原告に支払つたことが、それぞれ認められる。右認定に反する原告本人尋間の結果は措信しない。

してみれば右訴え取下げの合意により原告は本件訴えについて権利保護の利益を失つたものというべきであるから、本件訴えを不適法として却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。(松本重美)

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